デートの日

2/3
前へ
/135ページ
次へ
 BAR | Ça vaにいくと、夜の雰囲気とは違った静けさがあった。  エントランスの足元に照らされていた照明も消えていて、 手入れされたガーデンの緑が青々しい。  昼も素敵。  完全にオフな彼を見れることに胸の高鳴りは隠せない。  本当に彼は来るんだろうか。  彼から連絡は来なかった。  本当に不躾な人だ。  それでも、  彼との交わした唇の柔らかさ、  触れた時の皮膚の滑らかさとしなやかな筋肉。  捻くれた態度なのに、笑顔が可愛かったり、、、。  思い出すだけで、胸がくるしい。  本当に私は手放せるんだろうか。  私は恐る恐るドアを開いた  カランカラン  夜のお店で聞いた音と変わらない音。  彼の姿を探しても、  店内にいるのは店長だけだった。 「な、なんで」  いない。  まだ来ていないだけ、、、?  店長が私に気がついて、近づいてくる。 「高島と待ち合わせなんだって?」 「はい」  声が震える。  悪い予感がする。  お別れの挨拶もなしにもう会いに来てくれないの。 「はは。 そんな顔しないで。 とって食ったりしないから。 コーヒー淹れるから座りなよ」  呆然と立っていると、優しい店長の笑顔に気まずい。  凍りつく足を動かして、どうにかカウンターに座った。  バーカウンターで珈琲、、、?  恐れ多いような。  夜の準備をしているのか、カウンターの向こうではいろんな包丁や果物が並んでいた。辺りを見渡していると、 すっと、コーヒーカップが出てきた。 「どうぞ」  あまりに早く珈琲がでてきたので、目をぱちくりして、驚いてしまった。  良い香り。  一口飲むと、チョコレートのような甘さと、後からくる苦味でほっと一息つく。 「今日はごめんね。あいつとデートだったよね。今日デートできそうにないよ」 「そう、、、ですか」  やっぱり  ただの気まぐれ 「あ、違うのよ。 たぶん、思ってるのと。 さっきまでここにいたんだけど、顔真っ赤で熱出てきたから、奥で寝てるんだ」 「え?」
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!

199人が本棚に入れています
本棚に追加