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「ほーら、見つけたぞ」伊藤は下を見て嬉々として言った。眼下に山道を急ぐ車のヘッドライトが見えた。
「傷がすんげー痛いんだけど」瑞輝は胸を押さえて椅子にもたれる。振動が響いてさらに傷み、顔をしかめた。背を浮かしても痛いし、もたれても痛い。
「気にするな。おまえの龍気が本気を出せばすぐ治る。それより見ろ、あいつら、どこいくつもりだ? 山の中に死体でも捨てるつもりか」
「え、殺されてんの?」瑞輝は伊藤の言葉にヘリコプターの窓の外を見た。暗い中に点々と光が見える。動いているのは車や電車で、外灯によって道がラインとして追える。郊外に出たので高いビルはない。山の上に電波塔のようなものが立っている。
「まだ死んでないだろう。慌ててないみたいだから」
「で、どうするの? 上から飛び降りるの?」
伊藤は瑞輝を見てニヤリと笑った。「そうしたい? 突き落としてやろうか?」
「いや」瑞輝は首を振った。「けっこうです」
「この先に石詰神社があるねぇ。あいつら封印するのに借りる気かもしれない。先回りするか」
「そこも業界関係のとこですか?」
伊藤はウインクした。「そ、業界」
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