ただのオーバーヒート

1/1
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

ただのオーバーヒート

 ただの、オーバーヒート。  今ならぼくは、その状況を冷静に評価することができるけど、そのときはほんとうに、ぼくが幼かったときだし、それにやっぱり、愛にも似た感情に支配されていたのかもしれない。  ただのなにも映らなくなった電子ポスターの前で、わんわんと泣きわめく子どもを見たら、いったいどうしたことだろうと不思議に思うだろう。でも、そのときのぼくの説明を受けたほうが、ますます理解に苦しむことになってしまっただろう。  とにかくぼくは、その場所でしばらくひとり泣いて、お兄ちゃんとの別れを惜しんだ。それからしばらくして、少しあたたかいような雪が降ってきたので、家にとぼとぼと帰っていったんだ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!