あたたかい冬

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 そういえばぼくは、ほんとうはこのお兄ちゃんが普段どんなふうに生活して、どんなことを考え生きているか、ほとんど知らないんだったな。だけどぼくはほんとうに、お兄ちゃんが欲しくて欲しくてたまらなくって。  ああ、そうそう。ぼく疑問に思ったんだけどさ。冬ってもともと、冷たかったり寒かったりするものじゃないの?  ぼくは内心にかかえている不安を押しころしながら、まだまだ不気味な笑顔を浮かべているお兄ちゃんに対して、なるべく明るい声をつくって言うのだった。  うん、だから?  だからさ、冬なのにあたたかいなんて、変な感じ。  ぼくがそうつぶやくと、そのお兄ちゃんはやっと、人間らしい笑顔を見せて、おかしそうに笑ったんだ。  はは、トウマ、お前はほんとおもしろいなあ。兄ちゃん、そんなこと考えもしなかったよ。  ぼくは、やっとそのお兄ちゃんの人間らしさを確かめることができ、ちょっと安心しながら話を続けた。
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