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いやだ。ぼくはこんなにも冷たいマフラーなんて、存在しないでほしかった。このままそれを、やぶり捨ててしまおうとさえした。
けれどもすぐに、ぼくの手はお兄ちゃんのうすっぺらい顔へとのびてしまったので、そのマフラーをやぶり捨ててしまうことなどできなかった。
お兄ちゃんはそのとき、あの不気味な笑みをうかべながら、呪文のように、あるいは呪いのようにある言葉をはき捨てた。
冷たい生者。あたたかいロボット。それとも、実体のあるホログラム。もしかしたら、ポスターのなかの冷たいマフラー。
もしかしなくても。ぼくは、そのポスターに映し出されたマフラーをもう一度触ってみた。すると今度は、予想に反してあたたかさを感じる。と同時に画面はまっくらになってしまった。
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