あのときから

2/3
前へ
/8ページ
次へ
 けれどね、お兄ちゃん。きみはたしかにぼくのはじめての友だちだった。だから。今度はぼくが質問するね。  ねえ、これはなんだかわかるかい?  あのときみたいに、暖冬の雪の降る夜だ。田舎町でたまたま見かけた、少し塗装のはがれかかったポスター。いまどきめずらしい、ベニヤ板に釘で打ちつけられたポスターのなかには、昔見慣れていた顔が映っていた。こころなしか、以前よりもやわらかな表情をしているように見えた。  ぼくは、その看板にそうっと、毛糸であんだ赤いマフラーを巻いたんだ。  空耳かな。かすかに昔懐かしい声で、ささやくのが聞こえる。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加