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博士のもとにやって来たマスコミ関係者達は、マフの実を体験し、皆が一様に目を丸くした。
「なるほどこれは凄い。早速番組で紹介しよう」
「うちの雑誌でも取り上げましょう」
そんな声が次々に上がったが、一つ問題があった。
商品名と、この新しい味の呼び名である。
「雑味ではダメですか?」
博士が言うと、皆は一様に首を横に振った。
「雑味はイメージが悪すぎる」
「取り除くものという大前提が皆の中にあるからね」
「どんなに良い物でも、名前一つでダメになる。だからいい名前を」
プロがそういうのだから、博士に異論があろうはずも無かった。
「どんな料理もより上手くすると言うのだから、超旨味というのはどうです?」
助手の言葉にも彼らは首を縦に振らなかった。
名前が紛らわしい。旨味を否定している感じがする。発想が幼稚。そんな事が理由に上げられ、助手の心は傷つけられた。
やがて誰かが言った。
「もう、マフ味で良いんじゃないか?」
「確かに。新しい物の走りだし、響きが可愛い」
「原料が分かり易いのは良い事だ」
そして、製品はシーズニングとの造語でマフニングと決定した。この間、博士も助手も一言も発していない。だが、博士はこのマフ味の権威とされ、あちこちのテレビ局や雑誌のインタビューでマフニングをアピールしていく事になった。
「せっかくだから健康に良いと言う事にしよう。例えば代謝が良くなるとか。血液サラサラとか」
「後は美容にも良いとしましょう」
「いや、そんな効果は……」
博士の言葉には誰も耳を傾けてくれなかった。
「大丈夫。ちょっと各界の権威のお墨付きを貰えばいいんです」
「効果が期待できるかもしれない、程度なら万が一の時にも言い訳は立つし」
こうして、マスコミの力で全ての食べ物を美味しくしてくれる奇跡の調味料、マフニングは瞬く間に世に広がった。
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