博士の功績

4/6
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 博士のもとにやって来たマスコミ関係者達は、マフの実を体験し、皆が一様に目を丸くした。 「なるほどこれは凄い。早速番組で紹介しよう」 「うちの雑誌でも取り上げましょう」  そんな声が次々に上がったが、一つ問題があった。  商品名と、この新しい味の呼び名である。 「雑味ではダメですか?」  博士が言うと、皆は一様に首を横に振った。 「雑味はイメージが悪すぎる」 「取り除くものという大前提が皆の中にあるからね」 「どんなに良い物でも、名前一つでダメになる。だからいい名前を」  プロがそういうのだから、博士に異論があろうはずも無かった。 「どんな料理もより上手くすると言うのだから、超旨味というのはどうです?」  助手の言葉にも彼らは首を縦に振らなかった。  名前が紛らわしい。旨味を否定している感じがする。発想が幼稚。そんな事が理由に上げられ、助手の心は傷つけられた。  やがて誰かが言った。 「もう、マフ味で良いんじゃないか?」 「確かに。新しい物の走りだし、響きが可愛い」 「原料が分かり易いのは良い事だ」  そして、製品はシーズニングとの造語でマフニングと決定した。この間、博士も助手も一言も発していない。だが、博士はこのマフ味の権威とされ、あちこちのテレビ局や雑誌のインタビューでマフニングをアピールしていく事になった。 「せっかくだから健康に良いと言う事にしよう。例えば代謝が良くなるとか。血液サラサラとか」 「後は美容にも良いとしましょう」 「いや、そんな効果は……」  博士の言葉には誰も耳を傾けてくれなかった。 「大丈夫。ちょっと各界の権威のお墨付きを貰えばいいんです」 「効果が期待できるかもしれない、程度なら万が一の時にも言い訳は立つし」  こうして、マスコミの力で全ての食べ物を美味しくしてくれる奇跡の調味料、マフニングは瞬く間に世に広がった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!