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博士はあちこちのテレビ局に呼ばれ、曲が用意したデータをそれらしく解説した。
雑誌のインタビューでは、この調味料との出会いを劇的に語らねばならなかった。
マフの実を乾燥、粉末化したマフニングは飛ぶように売れた。世間の人々は適当に料理するようになった。食べられる程度の物であれば、マフニングをかけるだけで劇的に美味しくなるのだ。
寧ろ、そのまま食べておいしい物は、マフニングをかけると味が強すぎるため、敬遠されるようになった。
広告塔として採用された人気アイドルグループが、SNSにマフニングを持ち歩いていると投稿した。
すると、それがきっかけで若者の間では、自分のマフニングを小分けボトルに入れて持ち歩く、マイマフボトルと言うのが流行った。
愛好家達は自らをマフラーと名乗り、マフニングの使用アイデアを次々に生み出し、ネット上はその使用動画で溢れた。
その裏でマスコミ関係者達は言い合っていた。
「万が一のことがあったとしても、マフニングの権威はあの博士だ」
「最悪彼一人に全て押し付ければいい」
そんな噂をされているとも知らず、博士は日々走り回っていた。
本当はマフの実の研究をしたいのに、ちっともできなかった。
食事をロクに取る時間も無く、当然マフニングを楽しむ事などできなかった。
博士が発見したはずのマフの実はもう博士の手には無かった。
「ああ、デグニ族のところへ行きたいなぁ。彼らと過ごしたゆったりとした日々が懐かしい……」
博士はそう言ってため息を吐き、また仕事へ戻るのだった。
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