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博士の功績
博士が南方の島にだけ済むというデグニ族の調査を終えて戻ってきた。
留守番していた助手は、すぐさま出迎えて調査の結果を聞きたがった。
「うむ、素晴らしい発見があったよ」
そう言って、博士は木の実をいくつか取り出した。
「これは何ですか?」
助手はそれを見て眉をひそめた。
これまでに見たことの無い実だったからだ。
二センチほどの円筒形の実だった。全体的に細かい毛が生え、円筒の真ん中には反対側まで貫通する穴が一つ空いていた。
「デグニ族に代々伝わると言うマフの実だ」
「マフの実?」
「現地の言葉では、違う言葉を使うようだがね。マフ、というのはこの島を最初に訪れたイギリス人が、当時はやっていたマフという女性用の装飾具に似ていたからそう呼んだのだとか」
ガイドが教えてくれたのだ、と博士は言った。
助手はその装飾具を知らなかったので、早速調べてみた。暖かそうな布製の筒だった。手を両側から突っ込み、寒さから守るための物らしい。なるほど、形は似ていると助手は妙な感心をした。
「貰ったのですか?」
「いや、勝手に頂戴してきた」
「良いんですか?」
「大いなる発見のためだ。多少の事は仕方あるまい」
悪びれない博士に、助手は少し呆れた。
「で、この実が大発見ですか?」
「君はこんな形の実を見たことがあるかね?」
「言われてみればないです。新種ですか?」
「あるいはすでに絶滅したと思われている中の一つかもしれん。いずれにせよ大発見だ」
だが、博士はさらににやりと笑った。
「だが、形だけではない。この実の用途がまたすごいのだ」
「どう凄いのです?」
「まあ、すぐに準備をするから待っていろ」
バタバタと何か用意を始める博士を見て、元気だなと助手は少し呆れるほどだった。
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