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「こらあっ! いい加減にしろっ」  道中に遭遇した突然の鬼群(オーク)の襲撃。  迎撃に当たった拳闘士に向かって、一人の聖職者が吠えた。状況はほかのパーティを巻き込んでの混戦。聖職者はその中を縫うように走り、仲間の拳闘士のもとへ辿り着いた。  背後からどつかれた拳闘士は、まさか後ろを取られていたとは思わず反射的に反撃をしかけたが、振り返った先に見えた顔にビタッと止まった。  その腕を掴んで、聖職者は拳闘士をずるずると後方へと引っ張り込んだ。 「さっきから見てりゃホイホイ攻撃を受けやがって! 少しは回避くらいしろっ」 「俺の聖なる鋼たる身体には傷一つ付けられん!」 「やかましいわ!! しっかり削られてんだろがっ」 「正直回避がめんどい…ぃだだだいたいいたいっ」  ひどい打撲痕のある腕を力いっぱい掴んで捻り上げた聖職者へ訴えてみたが、冷ややかな視線が返ってきただけだった。が。  ポイっと放された腕はおろか、ほとんど全身に負っていた傷が塞がっている。自分のごつごつとした手を握ったり開いたりしながら、拳闘士はいつも見事なもんだなと感心した。  他の聖職者のように自分たちの神への祝詞もない、優しい光を放つこともない、いつもこの聖職者はどうやって『祈り』を捧げているのかと不思議に思う。  少しまじまじと見過ぎてしまったのか、聖職者の眉間がぎゅっと寄った。 「おらっ、キリキリ働いてこい!」  声と共に蹴りが飛んできたので、そこは回避する。  「あ、てめ」と聖職者は沸騰するのだが、回避しろと言ったのに理不尽な、と思いつつ拳闘士は更に彼の間合いの外に出た。  そうして、拳を突き出して黒い瞳を笑わせる。 「神さえ凌駕する御業を見せてやろう!」 「んなもんいねえっての」  呆れた聖職者のおよそ聖職者が言ってはいけないツッコミを背後に受けながら、拳闘士は再び前線へと駆け出した。揺れる金髪が気前だけはいい太陽を受けて輝く。
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