『カレシのために、マフラーを』

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「いらっしゃいませ~。何をお探しでしょうか?」 「ええっとぉ、同じ高校に通っているカレシになんですけどぉ、バレンタインにマフラーをプレゼントしようと思って。何かいいのってあります?」 「ええ、ありますとも! そうですねぇ……カレシはスポーツマン的な?」 「そーなんですよぉ! スッゴイ格好良くってぇ!」 「承知しました! ではスポーティな感じで、こちらの商品なんて如何でしょうか? チタン合金で溶接されたニューモデルで、スポーツ触媒を搭載しており、吹け上がりも最高だと評判で」 「まぁ凄いわ! これならきっと重低音のエキゾーストサウンドが……って、『クルマのマフラー』じゃねぇかぁぁ! 何処の女子高生がカレシにエキゾーストの改造パーツをプレゼントするんだよ!」 「ご心配なく、ちゃんとした合法改造パーツですから」 「何だよ、『合法』って! 何処の脱■ハーブだよ、まったく!……そうじゃなくって、首に巻くマフラーですぅ!首に巻くヤツ!」 「何ですか、ならそう言って頂ければ……これなんてどうです? 割と人気商品なんですが」 「……え? 何かこれ、編み込みが雑じゃないですかぁ? ホントに商品?」 「無論ですとも。こちらの商品、『不器用な女子高生がカレシのために一生懸命編みました』的な雰囲気を演出するために作られた『手編み風マフラー』になっております」 「『手編み風』って! 詐欺じゃねぇか、それぇ! バレたらどうするのよ!」 「大丈夫です。ちゃんとセットで『絆創膏』もお付けしておりますので。これを予め指先に巻いておくことで『頑張りましたアピール』もバッチリと!」 「やかましいわ! どうやったら、あんな太い編み棒やカギ針が指に刺さるんだよ! 不器用にもほどがあるだろうが! そんなのに引っかかる男の頭が痛いわ!」
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