白い猫

1/9
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 私は真っ白な猫を飼っている。名前はミミ、友達はポールアンドジョーというブランドの絵に描いてある猫みたい。美猫だね、と言うから他人の目から見ても相当に可愛いんだろう。ミミには赤い首輪をつけている。たまに家の外に出すから家猫だということを近所の人が分かるようにだ。家はマンションの1階なのでミミには自由に出入りをさせている。でも、友達が口を揃えて可愛いというのだから用心しないといけない。猫を盗む人なんかいないと思うがさらわれたりしたら困る。  ミミは雌だ。女の子の猫っていうのは妊娠が困る。だから可哀想だが避妊手術をしてある。家の中に閉じ込めるのも嫌だったし、子供を産ませて貰い手がいなかった時に困ると思ったからだ。もちろん彼氏は作って構わない。毛の長いペルシャなんかいいな。ミミは毛が短い。  今日は年が明けて仕事初めの月曜日だ。私はホットコーヒーを淹れて、さて、朝ご飯は何にしようと悩む。ミミは足で耳の裏をポリポリ掻くと出窓の上でもう一度眠り始めた。東向きなので朝日が当たってポカポカ温かいんだろう。私は椅子から立ち上がってミミの隣に飾ってあるシクラメンに水をやる。  今日から初出勤だというのに天気がすぐれない。灰色の空は今にも雨か雪が降ってきそうだ。ヒールの低いパンプスを履いて家を出る。隣の家の犬が小屋から出て来てワンワンと吠えた。ここは住宅街なのでマンションや一軒家や建売が軒を連ねている。猫を飼っている家も多いらしく、たまに植木の陰から猫がさっと出て来て驚くことが多い。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!