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「……お前が、美少女として有名な小娘か。ふむ…確かに、悪くない見た目をしている」 5年前、険しい鉱山に囲まれた魔王城からやってきたのは、魔王とその数々の手下達だった。ちなみにその鉱山では、元々ダイヤモンドが採れたんだけど、魔王が発した漆黒の闇の波動で真っ黒のどす黒ーい宝石になっちゃったらしいわ。魔王が首から下げているペンダントにはその宝石を使用しているらしいんだけど、それがまた魅力的なのよねぇ。惚れ惚れしちゃうわホントに。 アタシは親から、魔王は醜い巨大な怪物の姿をしているって教えられてきた。どんなことをするにも無慈悲で残酷で、狡猾な頭脳を駆使しては人間を陥れ、傷付け、懲らしめてきた…って言われたのよね。その時の記憶はアタシの頭の中から一生離れないわ。だって大嘘だったんだもの!親がホラ吹きだったなんて、アタシとしては一番信じたくない最低の事実だったわね。今となっちゃ、どうでもいいんだけど。 「……えっ?どなたですか、あなた…」 5年前、バンパイアの血を分けられるまで、アタシは大人しくて人見知りな性格だった。人前で自分の意見すらろくに言えないような、意気地無し。バンパイアの血を分けられてからは随分性格が変わったんだけどね。 いやー、誰だって衝撃だと思うわよ。どなたですかーって聞きながら、当時のアタシは絶句でもしたい気分だった。 「……俺は魔王だ。お前を……許嫁にしてやろうとしに来た」 「………ええっ!!」 自分の目の前に魔王が居て、更にそいつがアタシを許嫁にしに来た…ってのは、正直この際どうでもよかった。そう、魔王は親の言っていたこととは違って…肌の色は薄紫だったものの、実に人間のような見た目をしていてまだ若く、高身長ですらっとした超絶イケメンだったのよ!! 闇の力を閉じ込めたような黒い瞳から発されるキリッとした眼光に、アタシは一瞬で魔王の虜になってしまったわ。ホントに美少年って感じで、それなのに強烈な魔力のオーラを漂わせていて。戦闘において只者じゃあないってことは、当時平和主義者で戦闘においてはド素人だったアタシにもわかった。この人は持っている力を隠せない程強い…アタシには未知の世界で、怖かったっちゃ怖かったんだけど…今思えばワクワクしてたわね。 魔王は腰まで伸ばした黄金色のサラサラロングヘアーに、黄金色の長いまつ毛が似合っていた。アタシと同様に長く高い鼻、さらに薄い唇。首は長くて、全体的にすらっとした印象を受けたわ。とにもかくにも、アタシはそんな魔王に惚れたのよ。 だから、許嫁にしてやるって言われた時は堪らなく嬉しかったわ。史上最高に幸せだったし、アタシの人生はこれでハッピーエンドだって思ったもの。アタシは恋のままに生きるのよ!成り行きに身を任せ、魔王と共に人生を歩むのよ!そんなセリフが脳内を飛び交っていたわ。 だから、平和主義者だったアタシは一瞬で魔王側に寝返ったって訳よ。ふふん、これが悪いって言ったら、アタシの未来の夫がアンタのことぶっ潰しちゃうわよ! そして魔王の嫁となった者は、女帝と呼ばれるの。アタシが魔王と結婚するのは、アタシの16歳の誕生日。つまりちょうど一週間後ってことよ! うふふ……そう考えただけで、ニヤニヤが止まらなくなっちゃうわ!あっはっは!
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