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6
「ふん……人間か。我が居城に侵入してくるとはいい度胸だな……」
金髪のサラサラヘアーに長いまつ毛。すらっとした輪郭に顔立ち。薄く綺麗な紫色の肌。そして漆黒の色をした魅惑的な瞳。まさに美少年であり、さらに強烈な魔力を秘めた彼は、誰かーーーもう、言うまでもない。
「ま、魔王……様……」
魔物部隊の魔物のうちの1匹が、恐怖に満ちた声で呟く。
人間相手ごときに苦戦しているようでは、その愚かさを責められ大目玉をくらうのではないかと危惧しているのだ。
父さんと母さんも、魔王の放つ凄まじい魔力のオーラ、そして闇の長なる者の貫禄に震え上がっている。
そしてアタシも、口の悪い自分の姿を見られたことに恥でいっぱいになっていた。
失望されたらどうしよう。
アタシは、今まで魔王の前では取り繕ってきたと言っても過言ではない。イケメンで最高に強い魔王に見合う妻になりたかったから。
まあ、アタシと魔王は、見た目的には特になにもしなくても申し分ない美男美女なんだけどね。
「……ネネカ。下がっていろ」
「はっ、はい」
魔王はそう言うと、パチンと指を鳴らした。ただ、それだけのことだ。
その刹那、突如天井から紫色の稲光がほとばしった。真っ青な雷の一閃が、父さんと母さんを貫く。
魔王は強大だ。
その気になれば、この宇宙をも支配出来ることであろう。まぁ、それは人間を滅ぼしてからの話だけど。
魔王は、好きな時に人間の街に赴き、好きな時に人間を皆殺しにして街を破壊する。一気に世界を滅ぼすのは、もったいない気がするらしいわ。まあ、気持ちはわからないでもないわね。
魔物部隊が苦戦していた父さんと母さんは、魔王の放った稲妻の魔法により一瞬で倒れた。そのまま、ぴくりとも動いていない。
「フン……つまらん。お前らが苦戦したというのだから、もう少し戦闘を楽しめると思ったのだが。一撃必殺じゃないか」
「す、すみませんっ!私達の力不足ですっ」
「これから、もっと修行に専念しますので…!」
魔物部隊達はへこへこ頭を下げている。なんだか可哀想に思えてきたが、しょうがないしょうがない。
「ネネカ」
「は、はいっ!なぁに、魔王様」
「ちょっと、散歩をしようではないか。共に行こう」
「えっ、はい、わかりましたっ」
アタシは出来る限り、優しげに微笑んだ。
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