0人が本棚に入れています
本棚に追加
―屋上―
昼休み、僕は千春に案内されて屋上に来ていた。購買部で焼きそばパンを買った後に来たからそのままここでお昼にすることにした。
「ここ…私のお気に入りなの。御霊市全部が見えて…風も気持ちよくて……えへへ。」
「そうだね……。あのさ、僕…ずっと前からこの街にいたかもしれないんだ。」
「えっ、急にどうしたの?」
「何ていうか…知らないはずなのに、何だか懐かしい気持ちになる。好きだよ…ここも、この街も。」
そっかぁ……って、今零くんとんでもないこと言わなかった!?
「本当に自分が誰だったか分からないの?そんな風に思ってるなら、何か思い出せるんじゃないかな?…って、思ったんだけど。」
「あ~……やっぱり、何も思い出せないかな。思い出そうとすればするほど、頭が痛くなるんだ。それってさ…思い出すなよっていう警告なのかもしれないね。」
「あっ、あの……零くんは、その……記憶喪失になって、怖くなかった?寂しいとか思ってない?」
どうしてだろう……この子、さっきから僕に優しくしてくれてる。だけど……僕には〈力〉があるから、これ以上は何も答えたくはない。
けど、答えてあげたい自分がいる……
「寂しくもないし、怖くもないよ。記憶がなくても…僕を受け入れてくれた人がいるからね。」
僕は自然と笑顔になっていた。たぶん、心の底から嬉しかったことを言えたからだね。
―その頃、体育館付近では―
ちょっとちょっとちょっと、何なのよ!急に私の霊筆が反応してると思って反応のする方へ来てみれば……何でもう〈妖魔〉が目を覚ましてるのよ!
「ククク……休暇に浸る愚かな人間共め…この猪口が相手してやるぞぉ!」
昼休み真っ只中の体育館はたくさんの人がいた。体育科の先生が監督みたいな感じでいるのは分かるけど、その体育科の先生に取り憑いてるみたいね……
「動かないで!あなた……〈妖魔〉でしょ!アタシが相手してあげる!だから、他の子に手を出さないでよね!」
アタシは制服の胸ポケットから霊筆を取り出しながら、猪口に立ち向かった。
最初のコメントを投稿しよう!