プロローグ

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プロローグ

aa06d14e-e422-4f6c-be37-9ce6dc7d7003 ミルキーハットを被った男が白銀の大地――半壊(はんかい)したガーベラドーム付近に立っていた。 足元には半人半獣の合成種(キメラ)だったもの――。 かつてストーンコールドを名乗っていた怪物――その頭部がズタズタに切り裂かれた状態で転がっている。 「俺がわかるかい? ストーンコールド……」 男は雪に()まりかけている頭部を掘り起こして、それに触れて(つぶや)いた。 その顔は、まるで離れて暮らしていた家族と会えたような、そんな表情をしている。 男は触れた手をズタズタになった頭部の中へと突っ込む。 すっかり血が(かわ)いている頭の中を、(かばん)の奥に入っているものを探すようにモゾモゾと動かす。 そして、何かを掴んだその手は引き上げられた。 彼の手には、小さな水晶(クリスタル)欠片(かけら)が――。 それは(あざ)やかに(きら)めく生命のような、そんな(かがや)きを(はな)っていた。 男は羽織(はお)っているロングコートから、もう1つ――寸分違(すんぷんたが)わない小さな水晶(クリスタル)欠片(かけら)を出した。 彼はその二つを(いと)おしそうに見つめている。 「フルムーン、ストーンコールド……もうすぐ会えるよ……」 男の名のはシープ·グレイ。 彼はアンをストリング帝国へと送った後――。 誰にも何も伝えずに独りで、この雪の大陸へとやって来ていた。 「そして、もうすぐ始まる……いや、終わるのか……」 そう小声で言ったグレイは、見つめていた小さな水晶(クリスタル)欠片(かけら)をロングコートのポケットにしまうと、かつてストーンコールドの頭部だったものをそっと地面に置いて、その場を後にする。 つけられていく1人分の足跡が、ここへ彼しか来ていないことを思わせた。 (ゆる)やかに振っていた雪が――風が急に勢いを増し始める。 まるでこの地に来た者を追い返すように、次第に強くなっていく。 豪雪(ごうせつ)――冷たい吹雪(ふぶき)がグレイへと降り注ぐが、彼はとても晴れやかな顔をしていた。 それは、親しき者を待っているかのような――あるいは何かを期待しているようなものだった。 「アンは彼と会えたかな……」 ミルキーハットを深く(かぶ)り直すと、グレイは独り言を(つぶや)いた。 ……出会いが。 そう……出会いがすべてを変えてくれる。 そして、グレイは内心でそう言葉を続けながら、白銀の大地を()みしめていった。
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