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エピローグ
ルーザーが自らの体を使って光の波動を放出し、バッカスが率いる大軍を消し去ったストリング帝国の近辺――。
その荒れ果てた大地には、機械の残骸と、バラバラになった死体の山が撒き散らされている。
その上を1人――ブーツで踏みつけながら歩いていく男がいた。
男はその残骸と死体の山からあるものを見つけると、それを手に取った。
眩く輝いている小さな水晶の欠片――。
その欠片は、凄惨なこの場には似合わない穏やかな光を放っている。
男は手に取った水晶を、力強く握ると笑みを浮かべた。
「返してもらうよ。これはママが造ったものだ」
男はそう呟くと上着のポケットに、握っていた水晶の欠片を入れた。
そして、被っている帽子の位置を直して、空を見上げる。
金属と油、それと血と肉の腐った臭いが充満する空気が、男が顔をあげたのと同時に、強い風によって流されていった。
「これで……これでようやくママを……」
男がそう言うと、荒れ果てた大地が震えだし、そして大きく割れ始めた。
その裂け目に、ストリング帝国の機械兵の残骸や、帝国兵のバラバラ死体が飲み込まれていく。
その振動は、男の目の前にあるストリング帝国も激しく揺らした。
遠くから聞こえる悲鳴に似た声を聞いた男は、そのままゆっくりと帝国へと歩き出す。
激しく吹き荒れる風の中を――。
揺れる大地の上を――。
その男――シープ·グレイは、レッドカーペットの上でも歩くかのように優雅に進んでいく。
「アンとローズ……チャンスは2度だけだ……」
了
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