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決して強引ではなく私の反応を待って動き出す弥生さんの舌に、私もぎこちなくだけれど応えてみせる。
経験が無いわけではないけれどこの行為に慣れている訳でもない私を、弥生さんは優しくリードしてくれる。
貴方の優しさが嬉しくない訳じゃないの。でもそんな慣れている弥生さんに少しだけ嫉妬してしまう私は心が狭いのかしら?
でもそんな事はすぐに考えられなくなるくらいに、弥生さんのキスは深くなる。必死の思いで私に覆いかぶさる弥生さんのワイシャツを握りしめると、彼は一度唇を離して片手で私の後頭部を支え直した後にまた口付けを繰り返す。
軽く優しく……それを繰り返した後にゆっくりと深さを増すキスに、酔わされて私も舌を絡ませる。
きっとみんなに好かれるような可愛い子ならば、彼のキスを受け入れ甘えて見せるのだろう。でも私はそんな可愛い子ではないの、私だって貴方を同じように酔わせたい。
素直に甘えていればいいのに、私は彼の首に両腕を絡ませ彼の舌をやんわりと噛んで更に挑発する。
……この時はまだ私は弥生さんをナメていたのだわ。
「私を挑発すると後悔しますよ、渚。」
彼は唇を離してじっと私を見つめる。後悔ですって?面白い、受けて立ってやろうじゃないの。
私は弥生さんから目を逸らさない。勝ち負けの問題じゃない、私は全力で彼の全てを受け入れる覚悟を見せたいの。
弥生さんの私に対する感情が何なのか、言葉としてはまだ貰ってない。でも私も貴方に伝えてはいないものね。
この事を話せば、順番が間違っていると馨なら怒るかもしれない。
でもね、私はまず彼に信頼されたい。私を信じて何をしてもどんな話をしても、今度は絶対に離れて行かないんだよって彼に分かって欲しい。
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