1 Club21

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1 Club21

 新宿歌舞伎町。雑居ビルの地下一階。 天井の防犯カメラが、薄暗い通路やテナントの入口を二十四時間監視している。  肥えた鼠が、カメラの赤いライトを見上げ、暗闇に眼だけが光る。  次にカメラが捉えたのは、古い建物とは不釣り合いな、ウェスタン・レッド・シダー製の上質な扉だ。『Club 21 会員制』の表札。扉の横には、テンキーが設置してある。  バックルームでモニターを観ていた鷹木真斗(たかぎまさと)は、映像を店内に切り替えた。  モニターは、ルーレットやバカラのテーブルを映している。不正行為(イカサマ)を監視する目的と、後から客と揉めないためだ。  たとえばブラックジャックは、プレイヤー(客)が指先を使い、ディーラーに様々な合図を送る。ハンドシグナルだ。 テーブルを指先でトントン叩くと、ヒットと言い、もう一枚、カードを引く意思表示になる。 反対に、手の甲を上に向けて左右に振ると、もうカードは引かずに、役を確定したとの合図になる。合計21を競うゲームだけに、一枚の差が勝敗を決する。客と揉めた場合は、ビデオ判定を行うこともある。  真斗がブラックジャックのテーブルを観ていると、インカムにスタッフの声が入ってきた。 「どうした?」 「社長、BJの5番のお客様、配当が三百超えました」 三百万円のことだ。 「なに?」
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