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2 武者震い
「三百? プロか?」
「いえ、おそらく、ツイてるだけだと……」
モニターを観ると、五番の客の前にチップが山積みになっている。
ツキだけの客は、結局勝ち負けを繰り返し、大勝ちして帰ることは少ない。しかし、営業時間はあと一時間ほどだ。勝ち逃げされれば、結構な損失になる。
「社長、どうしますか?」
真斗は束の間思案したが、「俺が代る」と立ち上がり、上着に袖を通した。
真斗は普段、ディーラーとして店に立つことは無い。この店と、ネカジ(ネットカジノ)の経営に専念しているからだ。
しかしこの日は、久しぶりに勝負をしたいと思った。痺れるような刺激に飢えていたのかも知れない。まだディーラーだったころの緊張感を思い出し、武者震いがした。
ただ、客に素顔をさらす気は無い。ここは闇カジノだ。どこで足がつくか判らない。
真斗は、仮面舞踏会のようなヴェネツィアンマスクを着け、店へと入っていった。
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