<2・であい>

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 もし吹奏楽部というものがあったなら、朝練で楽器の音が聞こえてくることもあったかもしれないが。何でもここの学校の吹奏楽部は、数年前に廃部になってそれっきりであるという。同好会がないわけでもなかったが、今は音楽系の部活動と呼べるほどのものは一つも存在していなかった。吹奏楽のみならず、軽音部やジャズ部といったものも含めて、である。  唯一残っている同好会が――会員一名の、“作曲部”というもの。他に音楽系の部活がないので、今はその一人が放課後の音楽室をのびのび占拠している状態だと聞いたことがある。その生徒は、なんと同じ学年。入学してまだ二ヶ月にも満たない一年生だというのだから驚きだ。同好会を自分で作って一人で音楽室で活動しているという。なんというか、凄い度胸と言わざるをえない。 ――あ、そんなこと考えてたら、なんか。  まるで“呼んだ”かのような感覚だった。窓に向けていた顔を上げ、廊下を見つめる究児。朝のこの時間に、音楽は聞こえない――朝練なんてあるわけない。そう思っていたが、よくよく耳を澄ませると何やらピアノの音が木霊してきているような気がする。ぽろん、ぽろん、と。音楽にしてはどこか不規則で、脈絡のない音だ。  もしかしたら、その度胸ある一年生は、朝も一人音楽室を使っていたりするのだろうか。  まだ始業までかなり時間がある。究児は携帯だけをポケットに突っ込むと、椅子から立ち上がった。特に目的があるわけでもないこの時間。別に教室にとどまっていなければいけない理由があるわけでもないのだ。  よくよく考えれば、ピアノをやる人間の手というのには興味がある。作曲部、というのもあまり想像がつかないものだ。もし活動しているなら、見物させてもらうこともできるだろうか、なんて思う。  元より変わり者呼ばわりには慣れている。図々しさならお墨付きなのだ。
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