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冷えた安普請のアパートの真ん中で、よれよれの布団を被ったこたつに足を突っ込む。全然あったかくなってない。俺はしかめ面のまま固くなった指先でこじ開ける。
プシュン。
充満した気体の弾ける音がして、これでようやく生き返る。
「ふぃー、やれやれ……お疲れ様、俺」
スカロング・ゼロ。最近なんかやり玉に挙がっているみたいだけど俺にとっちゃ魔法のお薬ですよ。染み渡るダブルグレープフルーツ。何もかもが濃いからすぐに酔える。酒ってそういうもんだろ。安くて早くてうまくて、酔える。それ以外に何があんのよ。
定番となったコンビニのやきとり(もも・たれ)二本(店で加熱済み)を取り出してかぶりつく。甘ったるいべたべたのこの味も、くだらん労働の後にはぴったりだ。うますぎず、多すぎず絶妙に満たす。ちょうどいい。俺にはね、こういうもんがお似合いなんだよ、分かってんの? 分かんねえだろうなあ、お医者様にはさあ。
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