俺たちの望むストーリーへ

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 目覚めたら、真っ白でした。  そんな言い訳通用するはずがない!俺は頭を抱えてマジに悶絶する。  職業・漫画家。本日締切の志賀孝太郎は悶える。しかし、現実は変わらない。原稿は白いまま。線一本たりとも書かれていない。  なぜだ。どうしてこうなった。眠るまでにペン入れまでは済ませたはずだ。後はアシスタントたちに手伝ってもらえば、間違いなく終わるはずだった。なのにどうして。 「まさか。いやいや」  ひょっとして、さっきまで見ていた夢は、夢じゃなくて現実だった?そんな疑問が過ったが、俺はないないと首を振る。いくら職業が漫画家であろうと、そんな荒唐無稽な話を信じられるはずがない。 「でもなあ」  じゃあ、ペン入れまで済ませた原稿はどこ言ったんだと訊かれると答えられない。誰かが持ち去った?そんなはずはない。スケジュールが押しに押して、今日までアシスタントなしでやるしかなかったというのに。 「ううむ」  どうやら本気で夢のことを検討しなくてはならないらしい。しかし、困ったぞ。その夢というのが、なんともメルヘンというか、心に堪えるというか、とても大変な内容だったのだ。
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