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〈第九章決意〉
-蜜月。。二人の熱く愛しい時間-
西の丸の裏の小屋で目覚めた二人は抱き合ったまま、うっとりと見つめ合っていた。
「姫様。。夕べは。。」
「もう。。私は眠っていたのに。。二度もなさるなんて。。」
「灯火を消してなんて、おっしやったものですから。。我を忘れてしまいました。。」
「。。私も、我を忘れて。。恥ずかしいのじゃ。。」
「そなたは、真に綺麗で愛しすぎます。。」
安成は顔を寄せて愛しそうに鶴姫の顔を覗きこむ。
鶴姫は、はにかんで見つめた。
「姫様。。。愛してます。」
「安成。。私もじゃ。。」
互いに囁き合うと、再び二人は熱く口唇を重ね、脚を絡ませ合った。
「もう。。安成ってば、離れられなくなるじゃないか」
「離しませぬ。。離れてはなりませぬ」
互いの素肌の香りは、離れもやらぬ心地よさだった。
火照りが冷めぬ二人は、城に戻る前に
朝の浜辺に来た。
指先を絡めて手を繋いでいた。
朝凪の海風に、身体の火照りを逃がそうとしていた。
「これから私たちは城に戻らねばなりませぬ。気分変えに海に向かって叫ぶのです!」
安成がいきなり言ってきた。
「海に向かって叫べと?何をまた面白い事をおっしゃる?」
「思いのまま、叫べば良いのです。」
「では、安成から、やってみて!」
安成は深呼吸してから叫んだ。
「私は。。黒鷹じゃ--------っ‼」
「何じゃそれ?笑えるなぁ‼」
「やはり可笑しいですかね?。。」
「では私はこう叫べばいいのか?」
「いざ‼姫様‼」
「私は。。鶴じゃー--------っ‼」
「やはり何か可笑しいぞ‼」
「鶴も、黒鷹も鳥なんですよね‼雀もじゃ‼」
「何故ゆえ私たち、鳥なのかっ‼」
二人はケラケラと笑い合った。
「では安成、今一度叫びます‼」
「次は何と?」
「姫様----っ‼愛してまするー--‼」
「もう!恥ずかし過ぎじゃっ‼」
するといきなり安成は鶴姫を抱き上げた。
「やっ‼誰かに見られたらっ」
「思いきり見せつければ良いのです‼私たちを‼」
安成は鶴姫を抱き上げたまま、砂浜の上を振りまわしながら歩いた。
「イヤじゃ---っ‼降ろしてぇ‼」
と言いながらも鶴姫も楽しそうに、はしゃいでいた。
朝焼けの空の下、二人は幸せ一杯だった。
数日後、三島城内では武将、武士たちが二人について興じて盛り上がっていた。
「陣代殿と鶴姫様、近ごろ夜な夜な何処ぞで一緒にいらっしゃるようじゃぞ‼」
「朝から浜辺で抱き合っている二人を漁夫が見たそうな‼」
「武士が武士を抱いてるなんて、如何なものじゃ?」
「何言うか!鶴姫様はお胸も大きく美しいではないか‼」
「己も一度お願いしてみたいものじゃ‼」
「しかし大祝様は、お認めになられているんじゃろうか」
-安成は男としてついに決意を固めた-
…鶴姫様をこの噂や中傷の的から守っていかねばならぬ。最早、ケジメをつけねば…
安成は後日、自分の父上左近太夫の元へ、鶴姫の大兄上大祝安舎の元へ頭を下げに行った。
左近太夫は父親として息子の幸せの為に出来る限りの協力をすると
大祝安舎は、最初は驚きながらも、この男ならば間違いないと
大事な我が妹を任せると厳しくも温かく認めてくれた。
三島城本丸内で、安成は鶴姫に話があると呼んだ。
-向かい合って座る二人-
「陣代殿。何だか改まって。。話とは何じゃ?」
「私はそなたと二人で今治にまいりたいのです。陣代安房殿の墓前に先だっての戦勝を報告を致したいのです。」
「私も実は父上と兄上の墓前に戦勝を報告に行きたいと思っていたのじゃ‼」
-二人の気持ちは一緒だった-
「して別名屋敷のそなたの母上様にもご挨拶させて頂きたいのです。」
「母上に?」
「姫様は一度も別名にお帰りになっておられませぬ。」
-鶴姫は、母妙林には神事や行事の毎には会ってはいたが、9歳で三島にやってきてから実家である別名屋敷には帰っていなかった事に気づかされた。-
「して安成?母上にご挨拶とは?」
「大祝様と私の父上には了承を頂きました。そなたとの結婚を母上様にもお認め頂こうと思っております。」
…結婚。。。安成と。。…
鶴姫は、顔を赤らめた。
「安成。。私は女武士だぞ?本気で貰ってくださるのか?奥方らしいことは出来ぬぞ?」
安成は、首を横に振った。
「鶴姫様。私はそなたと、この三島を守りながら生涯を供にしてまいりたいのです。そなたしか考えられないのです。それは、ずっと安成の願いでありました。」
真剣な表情の安成が目の前にいた。
「鶴姫様。私の奥方になってくださいますね?」
鶴姫も真剣な表情で安成を、しっかりと見つめ
「私でよろしければ奥方としてお迎え願います。」
かしこまって頭を下げた。
「では早速、別名に行く舟を用意させる。
よろしいですね?」
「安成‼嬉しいっ‼この上なき幸せじゃ‼」
鶴姫は途端に安成の胸に飛び込み、勢いで押し倒してしまう。
安成は、おっと!という具合に鶴姫の身体を抱き止めた。
二人の顔が一気に近づき見つめ合った。
「ここは本丸じゃ。安成、なりませぬぞ‼」
「はい。なりませぬぞ‼姫様‼」
フフッと笑い合って、嬉しそうに抱き合っていた。
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