死を見ゆる神

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 竜胆(りんどう)の角を折るときは、いつも澄んだ音がする。  ひとの頭に、黒髪を押しのけるようにして、二本の長い角が生えている。鹿のように枝分かれした、ほのかに輝く淡い色の角。  竜胆の姿は、そんな有様だった。  山神から授かったという角を折って煎じると、村人の万病に効く薬になる。根本から折っても、角は数日経つと不思議と元の長さにまで戻る。  角を持つのは村でただ一人、【ツノガミ】だけだ。  竜胆はツノガミとして十六年前に生まれた。  角と共に成長し、そして、数日後に死ぬ運命(さだめ)にあった。
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