死を見ゆる神

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 わたしたちはまた歩き出した。竜胆に残された時間は少ない。  やがて朝が来て、山はにわかにはしゃぎだした。目に刺さるような緑青が、あちらこちらで揺れている。命の臭う風が、汗をぬぐった。 「角が」  前を見つめていた竜胆が声をあげた。  二羽の兎が、はるか前のほうで跳ねていた。どちらも枇杷茶の兎だったが、一羽には身体の半分ほどもありそうな角が生えていて、その足取りはどこかおぼつかなかった。  角が生えた兎は、ふらつく身体で何度も木に頭突きをした。ほどなくして、角が折れて転がると、角のない兎がそれをくわえて走り去った。  片角となった兎は、仲間を見送ると、ゆらりと歩き出した。その姿はすぐに見えなくなった。  その後も、角の欠けた狼や熊を見た。二頭が一頭になるところも数多く見かけた。 「お前と同じだ」  角をくわえて走り去る獣を見て、竜胆が面白そうに言った。  ツノガミを置いて、角見が帰っていく。  きっと彼らは、仲間のところへ帰るのだろう。
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