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目を、覚ました。
わたしはそっと起き上がった。朝もやが見える。一晩眠っていたようだ。
なぜ、目を覚ましたのか。
村の外の者が薬を飲んだのに、なぜ生きている。
竜胆に問うために、隣を見た。
――そこには苔むした塊が転がっていた。
驚きに息を吸い込むと、喉に唾が詰まり、わたしは咳込む。肩で息をしながらあたりを見回した。苔の塊がぼこぼこと散らばっている。死体は一つもなくなっていた。
竜胆は。竜胆はどこだ。
動くものはない。枝の合間から射し込む光が、絹糸のように苔の塊におりている。
わたしの近くの地面には、小さな二つのでこぼこがあった。まるで小さな角のような――
「そんなわけない」
浮かんできた考えを消し去るように、わたしは声に出してつぶやいた。
竜胆はきっと、元気になったんだ。
角がとれて、ここに落ちて。身体が軽くなった竜胆は、きっと森を見て回っているんだ。
この塊が竜胆なわけないんだ。
竜胆は生きている。
生きている。
生きて……
「……そんな、わけ、ないんだ」
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