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わたしは、握った角を両手で持ち、もう一度折った。
はくり、という感触が腕の骨に伝わる。
乳鉢に折った角を入れ、乳棒で鉢の底に押し付けると、砂岩のように崩れた。少しずつ細かくなっていく竜胆の角は、星の粉のように練色に輝いている。
わたしの手つきを、竜胆が見ていた。
藍の瞳でじいと見ていた。
竜胆は壁に背中を預けて座っている。けだるげに柳の羽織を肩にかけている。
頭がどんよりと重くって、まともに起きてはいられないのだという。
寝ていればいいのに、わたしの手つきを見つめている。
家の中は、開けた戸から漏れてくる、まどろむような光でぼんやりと明るい。土と、青い草と、花と、甘やかな水のにおいがする。
戸を開けてあるのは、閉めていたところでどうせ村人が開けてくるからだ。
角をすり潰し終わった頃、さっそく一人目が来た。
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