死を見ゆる神

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 竜胆が自分の身体の前に手をついた。よろけながら立ち上がろうとするので、駆け寄って手伝う。  竜胆の肩に手を回して歩けたらいいのだけれど、わたしの身長では竜胆に届かない。竜胆の手のひらにわたしが肩を滑り込ませると、竜胆はやんわりと押しのけて、(かわや)、と言った。  頭がしっくりくる場所を見つけるために、竜胆は何度か左右に身体を傾けた。足を引きずりながら、草鞋も履かずに外へ出て行く。  彼はまだひとだ。食って、飲んで、厠に行き、眠る。  外で話し声が聞こえた。少しして、また村人が野菜を持って家の中へと入ってきた。
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