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黒い追跡者④
夕子が足に怪我をした上願を支えて小さな洞窟まで戻ると、折口と中野が待機していた。
「どうしたんですか?上願さん!」
中野が心配そうな顔をして駆け寄った。
「見ての通りだ。敵にやられた。おれとしたことが。」
折口が救急ケースを取り出す。
「すぐ傷の手当てをしましょう。」
「その必要はないわ。わたしがやる。中野君折口さんを捕まえといて。」
「」夕子は折口に銃を突きつけた。
「ええっ?どういうこと。」
中野が聞き返す。
夕子は折口のパソコンを取り上げ叩きつけた。
「この男は最初から私たちの情報を敵に流していたのよ。」
中野は上願の手当てをしながら驚きの声を上げた。
「なんだって!」
夕子は続けた。
「電子ヘリを危険な方向へ誘導させ、着地点も全て敵に分からせ‥‥」
「ぼ、ぼくは‥そんなこと‥」
折口はしどろもどろに答えた。
「折口さん、上願さんはヘリでのやり取りで全て見抜いていたのよ。」
「指揮官、ちょっと待った。」
上願は割って入った。
「上願さん、これだけ危険な目に合わされたのよ。」
夕子は強く言い切った。
「おれは折口がパソコンを打つ際の指の震えがずっと気になっていた。どうしてなのか?
長年の感だ。奴が情報を流してると確信した。
だがな、逆にそれを利用してやろうと思った。
おれたちはあまりにも情報不足だ。
アース教団やドクタースミスについてどれだけ分かっているか?」
「なるほど、だから上願さんはわざと囮になろうとした。」
「そういうこと。折口、もう観念しろ!」
上願は強く言い放った。
「申し訳ございません。」
折口は地面に頭をつけた。
「なぜ、敵に情報を漏らしていたの?折口さん教えて?」
夕子は詰め寄った。
「どうしても、どうしても‥」
折口は眼鏡を外し、既に涙目になっている。
「だから、どうしてこんなことをしたの?」
「本当にすみません。子供の手術のためにお金が必要だったんです。娘の蘭は白血病です。どうしても、どうしても‥許して下さい。」
「折口さん、顔を上げて、娘さんの安全のためにも医務局に連絡をとるわ。それよりアース教団からの経緯を話して。」
夕子は折口の顔を上げさせた。
「はい。」
折口はぽつりぽつりと話し始めた。
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