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黒い追跡者①
電子ヘリはベイエリア301街区に着陸した。
ちょうど中央シティーの最も西端にあたる区域である。
大災厄ビッグウォールがここにも直撃したはずだが、何故か破壊された光景はない。
とはいえ10年は経過してしまってるのだから、
それなりに復興できたのかもしれない。
それにしては不自然な風景だ。人がいる気配はまったくない。
夕子は闇の中に突き落とされたような気がした。
上願が煙草に火をつける。
「なんだかクソ気味悪いな。ここは?
まるで街が死んでるぜ。」
中野がヘリの眼鏡を取りながら相づちを打った。
「ほんとですよ、これじゃまるでゴーストタウンじゃないすか。」
折口がパソコンを抱えながら全員に目をむける。
「武器を持った集団がこちらへ向かってるようです。」
「ほほう、やっと敵さんのお出ましか、えらい歓迎ぶりだな。」
上願は煙草を足でふみつぶした。
「わたしたちは潜入する前から敵にマークされてたのね。」
夕子は上願に顔を向けた。
「そういうこった、お嬢さん。」
「上願さん、わたしはお嬢さんじゃないわ。
捜査官よ。いい加減名前で呼んで下さい!」
「おっと、こりゃ失礼。真木村捜査官
」
上願はぶっきらぼうに答えた。
「敵のかずは10人、顔にマスクを覆ってて識別不能、手に電子ガンを持ってます。」
折口の額には汗が滲んでる。
「みんな、準備して。敵は私たちが標的だわ。」
夕子はげきを飛ばした。
「アイアイサー、僕に任してくだい、」
中野がおどけて答える。
「中野君、これは命と命のやり取りよ。油断しないで。」
「はーい」
「真木村捜査官、ヘリの周りは霧が立ち込めていて敵が確認できない、おれがおとりになる。他のみんなは岩陰に身を隠してくれ。」
上願は上着から電子ガンを持ち、指示を送った。
「上願さん、了解、でも気をつけてね。」
夕子は上願を気遣う。
「とにかくおれに任してくれ!」
上願は霧の中に飛びこんだ。
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