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屈強な兵隊に囲まれて王宮へと連れていかれる私(色白メガネ痩せ型)は、周りの目にはまるで罪人のように映ったに違いない。
王宮に着くと、控え室に通された。早速王様に謁見する機会が与えられるらしい。大臣のモノ·ゲテと名のる老人から、王様の前ではひざまづくようにだの、言葉づかいに気をつけろだの色々と注意事項を聞かされた。
そして悲しいかな、今朝方買ったパンが入っているポムポムベーカリーの包みを女中に取り上げられてしまった。
近衛兵に誘われ謁見の間に進むと、さすがに緊張で体がこわばった。
謁見の間は広く、玉座に向かってまっすぐに真っ赤な分厚い絨毯が敷かれ、見事な彫刻がそこかしこにあった。そして左右に居並ぶ貴族とおぼしき人々がきらびやかな衣装を着て、この部屋の絢爛さに華を添えていた。
玉座に鎮座する王様は小太りで白いもじゃもじゃ髭の、これまたまっ白な髪のまん丸顔に王冠を戴いた、どこかで見たことのあるような懐かしい感じのする老人だった。
私は畏まって王様の前に歩み出て、うやうやしくひざまずいた。
「おお、そなたか、選ばれし勇者というのは。ふむ、わしにはどう見てもみすぼらしいちんけなただの男にしか見えんが、賢者のインコに選ばれたのだから本物なんじゃろう。……これ、あれを持てい。」
王様が命じると、「はは」という声とともに側に控えていた近衛兵が足早に去っていき、すぐさまうやうやしく両手で剣を掲げながら戻ってきた。
「これこそは王家に代々伝わる勇者の剣じゃ。そなたはこの剣を手に取り旅に出て、遥か東の魔城に住むという魔王を打ち倒し、この国に平和をもたらすのじゃ。」
……はあ、このじいさんは一体何を言っているんだろうか?
町の外には魔物がうろついている。中には相当危険なヤツだっているのだ。そんな中をどうやって東の果てまで行けというのか。
私を見てみろ。この細い腕で剣を振るえると思うか?重い鎧を着られると思うか?私の手の平からは炎も雷も氷の刃も出てこないぞ。出るのはせいぜいにぎりっ屁くらいだ。
とにかくひとつ確実に言えることがある。それは、この話はヤバすぎるということだ。首を突っ込んではいけない類いの話であることは間違いない。
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