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「どうじゃ、やってくれるな?」
王様が選択を迫ってきた。
まずいぞ、こんな理不尽な話を安易に引き受けてはダメだ! 何とかして断らないと。
「畏れながら王様、そのお話私といたしましてもとても前向きに考えておりますが、もし、もし万が一お断りした場合はどうなります?」
私がそう言った途端、貴族たちがどよめくのがわかった。
「無礼な……。」
「下賎の者の分際で……。」
貴族たちの間から侮蔑の言葉が聞こえてくる。手で首をちょん切る仕草をしている者までいる。
いかん! どうもまずいことを言ってしまったらしい。
「ふむ、この勇者プロジェクトは王国の最重要事業じゃ。そいつを断るとなると……反逆罪じゃな。強制労働所送りじゃ。」
王様は明らかに不機嫌な、低い声で言い放った。
「たしかに! こんな魅力的な話を断る不届き者はいないでしょうね。いやいや、うへへへ、ぜひその勇者の任、わたくしめに務めさせてくだせえ!」
私は満面の笑顔で揉み手をしながら、間髪を入れずに勇者の職を引き受けた。
あああ、なんてこった。結局やるしかないのか!
王様の顔がパッと明るくなった。
「おお、やってくれるか。そう言ってくれると思っとったぞ。そなたならこの大役、必ずや果たしてくれるじゃろう。皆の者、今ここにひとり勇者が誕生した!」
「頼もしいですなあ。」
「立派なもんですなあ。」
「よく見るとフクロウに似てますなあ。」
貴族たちが、明らかに気のない称賛を浴びせてきた。
「あとの細かい内容は大臣のモノ・ゲテに聞くがよかろう。では行くがよい、勇者パックよ!」
パチパチパチ……。
まばらな拍手に見送られて、私は謁見の間を後にした。
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