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後日談『青信号』
「鍵閉めた?」
「あぁ」
「じゃあ行こう!」
日曜日の昼間、君が僕の部屋にやってきて、そのまま泊っていった。ふたりでじゃれ合うように布団に潜り、互いの躰を求め合うのはいつものこと。しかも明け方もう一度してしまった。
満員電車の中で向かい合う君のネクタイの模様をじっと見つめていると、思わず欠伸が漏れてしまう。
「もしかして眠い?」
「かなりね……君のせいだ」
「ごめん、あなたが良すぎて止まらなかった」
「も、もうっ」
僕たちは同じ家から出発し同じ電車に乗り、同じ駅で降りて巨大スクランブル交差点の前に立っている。
いつも向こう岸に立っていた君はすぐ横にいて、青信号に変われば足並みを揃え、肩を並べて歩き出す関係になった。
思い返せば……いつスクランブル交差点の人の洪水に埋もれてもおかしくない恋だった。それを掴めたのはふたりの努力と暗黙のルールのお陰だ。
あの日見たいと願ったボーダーラインの向こう、そこに何が待っていたかって?
そこには、ただ君がいた。
おとぎ話でも夢でもなく、君という確かな存在が現実にいてくれた。
この先の恋の行方は、ふたりで作っていく。
すれ違わないように呼吸を合わせ歩調を合わせて……
それぞれの会社へ向かう分かれ道。
「いってらっしゃい、碧くん、今日も頑張って!」
「透さんもね」
別れても、すぐにまた会える。
確かな自信がある。
それはスクランブル交差点で鍛えぬいた『僕たちの恋』だから。
『scramble crossing』 了
あとがき
****
超ショートストーリー、いかがでしたか。
写真とコラボして、映像的にも楽しんでいただけるように工夫しました。
表紙とラストの写真は、私がスクランブルスクエアの展望台から撮った写真です。短い文章の中に巡りゆく季節や気持ちをふんだんに込めてみました。
2500文字の中に冬から夏までの季節の移り変わりと、出逢いから恋の成就まで盛り込んでいますので、かなり絞った文章になっています。一文が濃いと思いますので、読み手様にも沢山妄想して欲しいです。
なので……読み返すたびに、読者さまの中で新しい物語が生まれるかもしれません。
本棚に入れてくださってありがとうございます。スターも励みになりました。
途中まで名前がなかったので分かりにくかったかもしれませんので、補足すると……
俺=攻め=碧くん=君
僕=受け=透さん=あなた
私にしては爽やかな話で……珍しく年上受け、年下攻めでした。
もし漫画になったら碧くんが黒髪系で透さんがサラサラ~な清楚系かな~などと夢みてしまう。
名前 『碧(あお)』は青信号、『透(とおる)』は通るです。ダジャレ好きと笑わますね(〃艸〃)
青信号を颯爽と通り抜けていく二人に幸あれ!
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