とにかく嫌いなんだ!

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とにかく嫌いなんだ!

その昔! 12月30日頃に、父親が・・・そうですね・・・長方形に重ねられた『餅』をお米屋さんから届けて貰って居たのは、ここ北陸地方の米処だけでしょうか? 届けられた『餅』はまだまだ温かく、父親と母親が二人して重ねられた『餅』を広げて・・・幼い私には真っ平なとても大きく『餅』が見えました! それを、二人して包丁で真四角・・・そう今の切り餅くらいに切って行きます。 まだ、温かいので切るのはとても大変だと幼い私は二人を見てました。 二人は、それこそ汗を出しながら切って居ます。 そうですね? 約五十切れ程ですかネェ? とにかく・・・沢山の切り餅がどんどんと切られて出来て行きます。 突きたて蒸し立てのお餅! ほのかに・・・良い匂いが部屋に充満してました。 でも・・・私達兄弟には恐怖の一週間の始まり、始まり! 大晦日・・・年越しですから、沢山の料理が食卓に並んで居ます。 マァ・・・沢山って言っても・・・昭和三十年代ですから、今のような豪華な物は有りません、でも、私達兄弟にご馳走でした。 母親が得意な、焼豚! 煮物! 栗キントン! 蒲鉾! 錦玉子! ソーセージ! ハム! 鶏唐揚! それを・・・摘みながら、例の赤白歌合戦を家族で観てました。 番犬の太郎君も、鶏笹身のご馳走です。 外は深々と雪が降ってます。 太郎君も今日は暖かいお家の中でご機嫌な顔! 年越し蕎麦を食べて、もう幼い私は・・・お眠むのお時間がとっくに過ぎて居ます。 炬燵でそのまま寝てしまいます。 毎年、兄や父親、母親が・・・今年は除夜の鐘が聴けるかなぁ? って聞いて来ますが・・・今年もダメでした。 明けて・・・新年! 母親手作りの御節料理! 父親得意の中華料理! 父親の酒の肴が沢山出て来てます。 炬燵の上は・・・もう、置き場所に困るくらいの料理の数! 太郎君もちゃんとお座りの良い子にしてます。 全員揃って『明けましておめでとう』の声。 勿論・・・太郎君も・・・ウォ〜〜〜〜〜〜ン・・・とは吠え無いけど、顔がニヤけて居ます、それもその筈、ご馳走が目の前にありますからネェ! 主食は勿論『お餅』! お雑煮にお餅入り! 太郎君用には冷蔵庫にあるご飯に蒲鉾や鶏笹身とこの日ばっかりはお雑煮に出し汁の豪華版っす! 太郎君・・・もう必死に食べてます。 私が、栗キントンばかり食べるので、母親が注意するのは、毎年のお馴染みですネェ! こうして、遅い朝食を食べて、昼三時頃には・・・お汁粉にお餅が二切れ! 夜は御節に焼き餅! 翌日二日も・・・同じ献立! 翌日三日も・・・同じ献立! これが三日の晩から・・・少しだけ、オカズが代わりますが『お餅』はかわりません! とにかく四人家族で・・・五十個の餅を小正月迄に食べなければなりません! 毎日、毎日、朝昼晩と『お餅』が出て来ます。 安倍川餅! キナコ餅! お団子! そして・・・雑煮! 耐えられるのは、三日目くらいまでっす! 毎日同じ献立! そして『お餅』! 現在みたいに、24時間やってるコンビニやスーパー等は有りません。 お店も1〜8日迄は正月休み! 悲惨なのは、4日以降です。 父親、母親は仕事に! 歳の離れた兄は・・・デートか友達の家に! 残された、私と太郎君だけ!  太郎君用に母親がご飯を炊いて居ますが・・・これは太郎君用! 誰も居ない家で・・・私は母親が朝煮た冷えた餅を冷えたお汁粉に入れて食べてます。 昼も同じメニュー! 夜には・・・正月御節の残りと『お餅』! もう・・・『お餅』は口に入れたくは有りません! 見るのも、嫌でした。 この時期、私は太郎君のご飯を恨めしそうに見てました。 これが、学校が始まる迄続きました。 今でも『お餅』は嫌いな部類に属して居ますネェ! 学校が始まり・・・給食に・・・餅が出た時は、幼いながら、神様を呪いましたヨ。        〜餅嫌い〜 終わり
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