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「つなぎ着るとちっちゃ」
こちらの話を全く聞かず、帽子を渡してきながらそんなことを言ってくる。
「小さくはないと思いますけど」
「んー、そういう意味じゃねぇ」
では、どんな意味なのだろう。
それを聞こうとしたら、手を引かれ歩き出すから聞けなかった。
聞いてはいけない雰囲気?
違う、そんな感じではなくて、照れてる感じというか…
連れて行かれている間、松羅さんは無言。
こんなことも珍しい。
常に何かを話してくれるヒトなのに。
初めの頃にあった、怖い印象は全くなくなっていて。
イヤ、だって、あの時は全身黒にサングラスだったし、怖くないわけがない。
だけど今は、サングラスはあの日以来かけてないし、雰囲気もそこまで怖くはない。
「車で移動、ですか?」
「少しばかり遠いところ」
ふとした時、小さく笑うからソレがわかると怖いとか感じることはない。
今も少しだけ笑って、ソレがどことなく子供っぽく見えた。
「どこと聞いたところで、ここがどこかもわからないので聞きませんけど、どんな内容のお仕事なのでしょう?」
「言ってもいいけど、行ったらのお楽しみにしようか」
なぜ内緒にされるのかわからない。
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