gear.3

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車に乗ってから三十分ほど。 ビルの駐車場に入って行く。 「ここで働いているのですか?」 「昨日までは」 「どういう…?」 「ただの引っ越し」 焦る… いくら松羅さんと言っても、ウチの親なら平気で潰し兼ねない。 あたしが帰らない間は、常にこの恐怖がつきまとうんだ… 「…それならよかったです…」 小声で言ったのに聞こえたのか、わざわざ帽子を取ってまでして頭を撫でてきた。 「大丈夫」 あたしの心配に気づいたんだろう、優しく笑ってそう言ってくれる。 なんだか、安心させてくれるような、そんな笑顔。 恥ずかしくなって、帽子を取り返し深く被り直す。 「こっち」 手を引かれることはないものの、歩調を合わせてくれているようで心境がバレている感じ。 ソレもソレで恥ずかしい。 「麗衣にしてもらうのは、俺と俺の部屋の整理な」 「ハイ」 エレベーターに乗り込んだけれど、あっという間につくし下を向いていたから、ここが何階かわからないまま。 歩き出す松羅さんについて行くしかない。 会社ごとの引っ越しではないのだろうか? すごく静かで、そんなことしてないように思える。 松羅さんの言う部屋に到着するまで誰にも会わなかったし。
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