gear.1

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「……おい」 「イヤ!やめて!来ないで!」 「誰もこねぇよ、こんな路地裏」 聞こえてきた声は予想とは全く違う、心配するような声でもなんでもない声。 隠れるように身を潜めていた場所で、顔だけをそちらに向ければそこにいるのは知らないヒト。 「……だ、れ?」 黒の帽子を目深に被り、少し小さい感じの黒のサングラス、そして黒のパーカーに黒のパンツ。 まさにコレが全身黒ずくめの男です、と言ってるようなもの。 唯一違うのは、帽子から少し見える髪が金色だということだけ。 「追われてんの?」 「えっと…ハイ」 赤の他人に聞かれて答える義理はないけど、つい答えてしまった。 助けてもらえるとは思ってない。 立ち上がってフラつく足に気合いを入れていると、小さく笑う声が聞こえる。 不思議に思いそちらを見れば、妖艶というのかそんな表情で笑顔を浮かべていて。 「助けて、やろうか?」 「えっと…大丈夫です」 なんだか、怖い。 せっかく逃げ出したのに、このヒトのところでまた同じようなことになれば、なんのために逃げたのかわからなくなる。 「いいのか?さっきから聞こえてくる声、あんたを捜してる男だろ?」
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