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「……おい」
「イヤ!やめて!来ないで!」
「誰もこねぇよ、こんな路地裏」
聞こえてきた声は予想とは全く違う、心配するような声でもなんでもない声。
隠れるように身を潜めていた場所で、顔だけをそちらに向ければそこにいるのは知らないヒト。
「……だ、れ?」
黒の帽子を目深に被り、少し小さい感じの黒のサングラス、そして黒のパーカーに黒のパンツ。
まさにコレが全身黒ずくめの男です、と言ってるようなもの。
唯一違うのは、帽子から少し見える髪が金色だということだけ。
「追われてんの?」
「えっと…ハイ」
赤の他人に聞かれて答える義理はないけど、つい答えてしまった。
助けてもらえるとは思ってない。
立ち上がってフラつく足に気合いを入れていると、小さく笑う声が聞こえる。
不思議に思いそちらを見れば、妖艶というのかそんな表情で笑顔を浮かべていて。
「助けて、やろうか?」
「えっと…大丈夫です」
なんだか、怖い。
せっかく逃げ出したのに、このヒトのところでまた同じようなことになれば、なんのために逃げたのかわからなくなる。
「いいのか?さっきから聞こえてくる声、あんたを捜してる男だろ?」
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