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二日後──
俺の前には渋い表情の男と、その隣に麗衣。
なんの策もなく迎えに来ると言ったわけじゃないから、正々堂々とアポを取りつけて来た。
「お嬢様を保護していたのに、何も言わず連れ去られたんです。それなりの報酬というものが欲しいところですね」
その言葉に麗衣の表情が曇る。
たぶん、よからぬことでも考えているんだろうな。
「……何が必要だ、金か?」
「そんなモノ、我が家にだって腐るほどありますよ。そうですね…では、コレの通りにいただきましょうか」
見せたのは一枚の紙。
麗衣を拾った時に見つけた、あの紙だ。
「──なんだコレは、こんなモノ知らないぞ」
「あぁ、やはりそうでしたか。不思議だったんですよね、お嬢様への溺愛ぶりは業界では有名なモノですから、コレをあなたが書いたとは思えませんでした」
知らないヤツはモグリと言えるほど、麗衣への溺愛ぶりはどこで話を聞いても一緒で。
そのことが気に食わないヤツの仕業だろうとは思っていた。
コレの首謀者は後妻だろう。
「けれど、実際にコレを見た人間が血眼になってお嬢様を捜していたのは間違いありません」
「自分はソイツらとは違うと言いたいのか?」
「えぇ、柞木家の力などなくても実際成功してますし、これから先も自分の実力であなたに近づきたいですね」
「……聞いていた通りの人間だな」
聞いていた?
麗衣が俺の話をしたとしても、実際に仕事をしている場を見ていたわけではないから詳しくは話せないだろう。
じゃあ、いったい誰が俺の話を?
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