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「キミの父親とは旧知の仲でね。娘を保護してくれていたと知った時に、久しぶりに連絡を取ったんだ」
「そうだったのですか」
「だったら、なぜ松羅さんの会社を潰すなんて言ったんです?」
今まで口を挟まなかった麗衣が、首を傾げて聞いてきた。
俺もそこは気になったけど。
親父と仲がよかったと笑って言っているくらいなのに、その相手の息子の会社を潰そうとするだろうか。
「どうやら私の知らないところで、よからぬ話が進んでいたようだね」
たぶんというか、ぜったい誰がそう言っていたか見当がついているんだろう。
そっちのことは何も心配しなくていいと言われた。
「それで?麗衣はどうしたい?」
「……あたしは……」
「ホンネで言ってごらん?」
「松羅さんの側にいたいです」
揺るぎなくそう言われて、少し寂しそうな表情になる。
ソレが娘を持つ父親の心境なのかは聞かないとわからないけど、溺愛する娘を手放すのは難しそうだ。
「麗衣さんを決して不幸になんかさせません。お願いします、麗衣さんと共に生きていくことを許してください」
本来は麗衣に先に言うことなんだけど、この間は時間もそんなことを言う余裕もなかった。
まぁ、ただの言い訳だけど。
だから、麗衣が目を見開いて驚いていることに、小さく苦笑いを浮かべて。
側にいたいと言ってくれたソレが、俺と同じ温度のことなのかはわからない。
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