last gear

9/9
85人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「麗衣はそれでいいのか?」 「……許していただけるのなら」 まだ告白もしてない。 麗衣の気持ちを知らなければ、麗衣が俺の気持ちを知っていることもなく。 見切り発車のような今の状況。 「…一つ、条件がある」 「条件?」 「月に一度でいい、顔を見せに来ることができれば許そう」 そんな簡単なことで許してもらえるのなら、一度と言わず何度だって連れて来る。 遠いところに住むわけではないのだし。 「ハイ、毎月帰って来ます」 「ありがとうございます、必ず来ますので」 麗衣の父親が寛大なヒトでよかった。 正直、ウワサで聞いていた限りでは、かなり厳格な感じに思っていたから。 急に現れた知らない男に娘を渡せるか、とか言われる覚悟だったのに。 こんなトントン拍子に話が進むなんて。 思ってもいなかったこと。 その後、少し話をして、麗衣も来るというので連れて帰って来た。 「麗衣、俺を選んでくれたってことでいい?」 「松羅さんこそ、あたしでよかったのですか?」 質問を質問で返され、麗衣の髪をクシャっとして抱きしめる。 「スキだ、俺と結婚してほしい」 「……ハイ、結婚します……あたしもスキです」 誰かが愛しいと思う気持ちが俺の中にもあったということを、麗衣に出会って初めて知った。 そんな気持ちを知らずに一生独身で過ごすんだろうとか思っていて。 「…あの時、出会えてよかった」 「見つけてくれて、ありがとう…」 出会えたことに感謝する。 全てにありがとうと、いつか、伝えたい。 いつか……
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!