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【深夜の故郷は黄】
{3}
「うっ!寒っ!」
外に出ると、結構な冷気が押し寄せて来た。
まあ、一月初旬という、時期も時期だし…
深夜二時という、時間帯も時間帯なので寒いのは当然の話だが。
「さて…。
とっとと、コンビニ行ってタバコ買おっと」
辺りは真っ暗で、街灯の明かりだけが、ぽつんぽつんと深夜の町並を黄色く…セピア色に照らし出していた。
「確か…
俺の母校の小学校って、こっちの方角だったよな…」
俺は、遥か昔の記憶を頼りに道を歩きだした。
恐らく、目指す小学校までは、歩いて二十分から三十分といった所だろう。
「うぅむ。それにしても、懐かしいなぁ…」
俺は、歩きながら町の風景の懐かしさに今更ながら感嘆の声を上げた。
今回、この町に帰省して、すでに数日間が経過していたが、
俺が故郷の町並を改めてじっくりと眺めたのは、帰省してからはこれが初めてだ。
無論、今の時間帯ではどの家も電気が消えて寝静まっているが…
「お、この本屋!よく立ち読みしたっけ」
とか…
「わぁ!この商店!よく買い食いしたもんだよなぁ」
と…
歩いているうちに、過去の昔の記憶が次々とよみがえって来た。
もう、かれこれ二十年以上も昔の事なのに…
「歩いてみると結構、思い出すもんだな…」
そして…
ひとしきり、懐かしみながら母校の小学校が有る方角へと、更に歩いて行くと…
少し先の方に、これまた懐かしい信号機が有る交差点が見えて来た。
そして、その交差点から少し離れた場所に、
明かりが灯った交番がぽつんと建っているのも同時に目に入った。
「お!懐かしい!」
俺は、改めて感嘆の声を上げた。
俺の通学路に有る信号機は、この交差点に有る一つだけである。
小学生の時分は、よくあの交差点をクラスメイトたちと渡って登下校したものだ。
それと…
あの交番……。
「あのお巡りさん…
まだ、あそこにいるのかな」
実は…
俺には、
あの交差点とあの交番にいたお巡りさんについて『ちょっとした思い出』が有るのだ。
それは…
どういう思い出かと言うと…。
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