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【渡るべき色は青】
{4}
あれは、確か…
俺が、小学校低学年の頃の話だったと思う…。
その日…
俺は、夕方からどうしても見たいテレビ番組が有ったのだが…
運悪く放課後、教室の掃除当番だった。
その番組を最初から見たかった俺は、後先考えずに掃除当番をサボって一人、ダッシュで家路を急いだ。
(いやはや…)
やがて…
いつも登下校で渡っている、あの交差点に差し掛かったのだが…
これまた運悪く、歩行者信号は赤に変わったばかりだった。
「うわ!テレビ、間に合わないかも!」
俺は、アセりながらも周囲を見渡したが…
元々、この町は結構なド田舎。
その時、道路には車が一台も走ってなかった。
「よし!渡っちゃおっと」
俺は信号が変わるのが待ちきれずに、その赤信号を無視して交差点を小走りに渡った。
すると!
渡りきった途端!
「おい!無視するなよっ!!」
突然!
後ろから声をかけられたのだ!
俺が驚いて振り向くと…
そこに恐い顔をした一人のお巡りさんが、ニオウ立ちで立っていた。
そのお巡りさん…
いつもは、ニコニコ笑っているのだが、その時は、物凄く恐い『オニの形相』をしていた。
「おい!駄目じゃないか!信号無視しちゃ!」
お巡りさんは、俺に向かって大声を張り上げた。
「ご、ごめんなさい…」
と、俺は内心、テレビ番組の時間が間に合うかどうか心配になりながら謝った。
「良いか?!
いくら車が全然走ってなくても、信号はちゃんと守らなきゃ駄目だぞ!」
「分かりました…」
「よし!じゃあ、ここで僕と約束してくれ!これから信号は、ちゃんと守るって」
「はい…。約束します」
と、そこで俺のその言葉を聞いたお巡りさんは、
いつものニコニコ顔になると…
「よし!良い子だ。
『男と男の約束』だぞ!」
と、俺の頭を撫でまくった。
それから俺は、慌てて家に帰ったが…
案の定、テレビ番組のスタートには間に合わず途中から見る事になり…
その上、次の日に掃除当番をサボった事で担任から大目玉を食らい…
まさに『フンだりケッたり状態』だった。
(まあ全部、自分が悪いんだけど)
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