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そろそろ二時間か。
なんだか眠くなってきたな。
アタシは出そうになるアクビを噛み殺す。
「眠いの?」
そんなアタシを見てナオキ君が、声をかけてくれる。
やっぱり優しい。
「昨日カギ失くしちゃってさ」
「え、家大丈夫だったの?」
「大丈夫じゃないよ。
夜遅くてさ。そんな時間にインターホンなんて鳴らしたら、確実に親に怒られるから、漫画喫茶に泊まって、電車動くようになった時間に帰った」
そんな話しをしていたら、何故か向かいのミナト君がクスクスと笑っていた。
今日、初めて笑っているとこ見たわ。
カナエもビックリしている。
「あ、ごめん。笑って、続き教えてよ」
「続きって、後は家に帰って嫌みのオンパレード。あんたは昔からそそっかしいだの、やっぱり一人暮らしは無理ね、とか。あー、さっさとお金貯めて一人暮らししたい」
「彼氏の家に行けば良かったじゃん」
とナオキ君が言う。
言われるまで、そんな事思い付かなかった。
よっぽど腹が立ったのかも。
アタシは昨日のイライラを思い出し、半分残っていたカシスオレンジを一気に飲む。
氷が溶けてもう薄くなっている。
そろそろお開きかな。
「あー、エマさんの話おかしかった。ちょっとトイレ行ってくる」
そう言ってミナト君が、かけていたジャケットの中から携帯を取り出す。
すると一緒に何かが落ち、カランと音を立てる。
それを「落ちたよ」とカナエが拾う。
「意外、これペットボトルについてたストラップでしょ?こーいうのカギにつけてるんだ」
そう言ってミナト君に渡す。
あのストラップ、アタシのカギについてたのと同じじゃん。
ドーナッツの形をしているから男でつけてるなんて珍しい。
「ちょっと子供っぽいよね。付け替えようと思ってるんだけど、なあなあで」
そして、カギをズボンにいれ席を立ち、軽く会釈をしてから出ていく。
居なくなってしまったから、早速カナエに話しかける。
ナオキ君は、仲を応援してくれてるから居ても大丈夫だろうと思って。
「で、どうなの?」
「うーん、手強い。全然隙ないし」
ため息をつきながらカナエが言う。
「でしょうね」
見てて分かるわ。
「でもホントカッコイイしイイ匂いなんだよね。なんかエマちゃんと同じ花っぽい匂いと煙草の匂いが混ざっててさ。どこの柔軟剤なんだろ?」
待って、アタシと同じような匂い?
それって、もしかして。
アタシは今日会ってから、ずっと感じていて違和感の正体に、やっと気がついた。
バカだ。
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