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 ベビードールの柔らかな香りが、近づいたと思ったら、目の前に座られ、話しかけられた。 「ここ、空いてる?」  予想通りの人物が、パスタとサラダの載ったトレイをテーブルに置いて、アタシをニコニコと見つめている。  アタシは、今日のおすすめB定食を、食べているところだった。 「空いてる。カナエもお昼?」  ベビードールの香りが似合う、お嬢様っぽい見た目のカナエとは、一年の時からの付き合いだ。  同じ学部で、席が隣になっただけだけど、たまたま気があって、付き合いは長い。  見た目は、それなりに女子大生してるけど、群れるのが嫌いなアタシとは、正反対な子。  今日だって、量販店のセーターとジーパンで、茶色のブーツをブーツインした、お手軽なアタシとは違って、まるで雑誌から抜け出したかのような、モテファッションで決めてるカナエ。  好みはあわないけど、何故か馬が会う。  高校生の時はなかったけど、こういう友達は、やっぱり貴重だとも思う。 「そう。それよりさ、明日ひま? 」  甘ったるい、砂糖菓子のようなその声は、ベビードールそのものを感じさせるから、嫌いじゃない。  でもカナエが、そーいう甘い声を出す時には裏がある。  大体の女の子が、そうなように。
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