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部屋を飛び出し歩いていると、さっきまでの火照った体が急激に冷めていくのが分かる。
シャワーでも浴びてくれば、良かったかも。
とも思ったけど、あれ以上キョウスケの部屋に居るのは、ちょっとイヤだった。
はっきりと答えられない優柔不断な自分も、期待をこめた目で見られるのも。
それに、終電逃したくなかったし。
別にキョウスケは悪いヤツじゃない。
付き合い始めた時は、もっとカッコよかったんだよ。
カッコイイって言葉じゃ陳腐だけど、アタシにとっては。
ライダースで、ばしって決めてて、クールでさっぱりしてて。知らない場所でもキョウスケが居ると、安心できた気がした。
大学に入ったばかりで、不安だったアタシにとっては、とても眩しく、大人の男の人のように思えた。
身に纏っていた、ブルガリブラックがホントに似合う男だったんだ。
なのに付き合ってみれば、それは表面だけで、中身は甘えん坊といえば聞こえはイイが、全ての判断をアタシに任せてくる。
何食べたい?
何したい?
次はどうするの?
そんな関係に、アタシはちょっと疲れている。
どっちかというと、アタシは引っ張ってくれる人の方が安心ある。
何があっても、自分が盾になって守ってあげるよ。って言ってくれるような。
アタシの理想とは正反対。
失敗したらアタシのせい。
成功したらキョウスケのおかげ。
という良く分からない理不尽な価値観を押しつけられる。
オマケに意外と嫉妬深い。
誰と居たの?
明日ヒマ?
俺の事好き?
アタシにだって予定の一つや二つあるのに、好きだったら空けられるでしょ。の一言で済まされてしまう。
告白したのはアタシだけど、今ハマっているのは絶対にキョウスケの方だ。
アタシは逆に冷めていってる。
早く別れようと思っているのに、いまだに離れられない。
だって、キョウスケの泣く姿を見たくない。
完全なワガママだとは分かってるんだけど、中々切り出せない。
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