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寒くなってきたから、自動販売機でコーヒーでも買おうと財布を取り出そうとしたら、カバンから鍵がこぼれ落ちた。
あれ?
と思っている間にカギはどんどん転がり、乾いた音を立てながら路地裏へと落ちていく。
あのストラップ貴重なんだよ、ペットボトルについてたオマケなんだけど、今は手に入らない。
っていうか、カギ無くなったら今日家に入れなくなる。
慌てて取ろうと、狭い路地に入る。
真っ暗で電灯のついていない暗がりで、何かモゾモゾと動いている気配がする。
アタシは訝しげに奥へと入っていく。
そこで、
何故かバーテン服の男と、毛皮の女がキスをしていた。
人が居るとは思わず
「あ」
とアタシは間抜けな声をだしてしまう。
その声に気付いた、バーテンの男と目があう。
とても、冷たい目をした男だ。
思わず「すいません」と言い、アタシは慌てて路地を飛び出す。
っていうか、勢いで謝っちゃったけど、アタシ悪くないよね。あんな人目のつく所で、イチャイチャしてる方が悪いんじゃん。ホテル行け、ホテル。
心の中で悪態をついた所で、カギはまだあの路地なんだよね。
アタシは今日の運の悪さに、泣きたくなった。
早く出てきて、どっかに行ってくれないかな。
アタシは苛立った心を落ち着かせるため、当初の目的通りにコーヒーを買い、飲みながら二人が出てくるのを待った。
五分ぐらい待ったら、ヒールの足音がして毛皮の女だけが、路地から出てきた。
アタシは、咄嗟に後ろを向いてやり過ごす。
っていうか、隠れる意味あるのか?
アタシ悪い事してないのに。
でも、気まずいのには変わりない。
まるで覗きをしたみたいな。
男の方は出てこないから、バーテン服も着てたことだし、店に戻ったんだなと思い鍵を取りに行く事にする。
すると、さっき二人がイチャついてた場所で、煙草を吸っている男がいた。
さっき睨んできた男だ。
まだ店には入っていなかったらしい。
アタシは無視して、カギを探す。
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