4

2/3
前へ
/32ページ
次へ
 寒くなってきたから、自動販売機でコーヒーでも買おうと財布を取り出そうとしたら、カバンから鍵がこぼれ落ちた。  あれ? と思っている間にカギはどんどん転がり、乾いた音を立てながら路地裏へと落ちていく。  あのストラップ貴重なんだよ、ペットボトルについてたオマケなんだけど、今は手に入らない。 っていうか、カギ無くなったら今日家に入れなくなる。  慌てて取ろうと、狭い路地に入る。  真っ暗で電灯のついていない暗がりで、何かモゾモゾと動いている気配がする。  アタシは訝しげに奥へと入っていく。  そこで、  何故かバーテン服の男と、毛皮の女がキスをしていた。  人が居るとは思わず 「あ」 とアタシは間抜けな声をだしてしまう。  その声に気付いた、バーテンの男と目があう。  とても、冷たい目をした男だ。  思わず「すいません」と言い、アタシは慌てて路地を飛び出す。  っていうか、勢いで謝っちゃったけど、アタシ悪くないよね。あんな人目のつく所で、イチャイチャしてる方が悪いんじゃん。ホテル行け、ホテル。  心の中で悪態をついた所で、カギはまだあの路地なんだよね。  アタシは今日の運の悪さに、泣きたくなった。  早く出てきて、どっかに行ってくれないかな。  アタシは苛立った心を落ち着かせるため、当初の目的通りにコーヒーを買い、飲みながら二人が出てくるのを待った。  五分ぐらい待ったら、ヒールの足音がして毛皮の女だけが、路地から出てきた。  アタシは、咄嗟に後ろを向いてやり過ごす。  っていうか、隠れる意味あるのか?  アタシ悪い事してないのに。  でも、気まずいのには変わりない。  まるで覗きをしたみたいな。  男の方は出てこないから、バーテン服も着てたことだし、店に戻ったんだなと思い鍵を取りに行く事にする。  すると、さっき二人がイチャついてた場所で、煙草を吸っている男がいた。  さっき睨んできた男だ。  まだ店には入っていなかったらしい。  アタシは無視して、カギを探す。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加