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「付き合う事になった?」  昨日の今日で?  授業前に、カナエにこっそりと告げられる。 「そうなの。昨日夜、メールが来てさ。エマが付き合ってくれたおかげだよ」  何考えてんだ、アイツ。  考えてくれとは言ったけど、そんな即決で付き合えって言った訳じゃない。  そんな無愛想にしてないで笑顔で対応しろとか、そんな事を言ったつもりなんだけど。 「でも、ホントにいいのカナエ?」 「何が?」  うわ、お目目キラキラしてる。  この時ばかりは、ベビードールの恋が叶うっていうウワサに、眉をひそめたくなる。  恋なら何でもいいのか。って。  こんなの言えないよ。  実はアイツ、彼女がいるだなんて。  しかも、アタシはカナエより先にキスしてるとか。口がさけても言えない。 「まだ会ったばっかりじゃん。もっと性格とか、趣味とか色々知ってからの方が、いいと思うけど」 「え、何で?」 「いや、アイツいつも勉強忙しいみたいだし」 「一緒に勉強したりするなんて、高校生みたいでイイじゃん。また青春がやってくるなんて、楽しい」 「バイトも多いみたいだよ」 「私もバイトしてるよ」  それもそうだ。 「っていうか、やっとミナト君と付き合えるのに、何で反対するの? 私がずっと好きだったの、知ってるでしょ?」  知ってる。  ここ一ヶ月くらい、ずっと話してたもんね。  でも、アイツは性格悪すぎる。  素直な性格のカナエじゃ、苦労するのが分かる。 「まさか、エマも好きになったの?」  と疑うような目でアタシの事を見てくるから、何も言えなくなる。  アタシが、キョウスケと別れたがっているのを知ってるから、言ってるのだろう。  それは誤解。  でも、嫉妬しているカナエに、何を言っても無駄だろう。 「なんでもないよ。カナエ、寂しがりやだから心配しただけ」  仕方なく話を打ち切る。 「大丈夫。私、燃えてるから。少しぐらい寂しくても、我慢するんだから」  それぐらいならイイけど、昨日の今日でもう彼女と別れられたのかな?  アイツ調子良さそうだったしな。 「それより、キョウスケ君手振ってるよ」  見るとアタシ達より五段は下の席で、嬉しそうに手を振ってるキョウスケが居た。 「気がないなら、早く別れてあげれば」 「それが出来ればそうしてるよ」  能天気な笑顔に、気が重くなる。  そして、ポケットに入れていたスマホが鳴る。  アタシは文面を見て、ため息が深くなった。
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