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かつら良し、メイクも綺麗系にした、ワンピースは普段着ない花柄で、胸元がっつり系。
黒いストッキングに八センチヒール、サングラスも、一応かけとくか。この前と違うムートンコートを着れば、別人のアタシの完成だ。
結局、アタシはミナトの働いているバーに、偵察に行く事にした。
バーなんて普段行かないから、必要以上というぐらい大人っぽく、アタシだと気づかれないぐらいにした。
昨日連絡先を聞かなかった事が、本当に悔やまれる。そしたら一発で確認できたのに。
でもアイツ、嘘つきそうだよな。
昨日の激変ぶりを見ると、どっちが本当のミナトなのか、良く分からない。
っていうか、変装までしてアタシは何してんだか。
そんなキャラじゃないのに。
と一人で突っ込みたくなる。
でも、気になる。
別れてないからって、どうするんだ?
決して、今日恭介と逢うのが面倒くさくて、入れた予定ではない。
この後会うし。
会ったらまた、一緒に住もうとか言われるのかな?
その気もないのに引っ張るのは悪いと思う。だけど、なかなか決心もつかない。
アタシは代わりに、バーのドアをあける。
ミナトがカウンターの向こうで、グラスを拭いていた。
その事に、ほっとする。
「お一人ですか?」
と声をかけられ「いえ、待ち合わせです」とカウンターに座る。
違うけど、一応待ち合わせのフリでもしとくか。
「何にします?」
アタシの前に、あの夜と同じ、バーテン服のミナトが立つ。
「ジンライムで」
大きいバーじゃなく、客もあまり居ない。カウンターの端にカップルが一組いるだけだった。
バーなんてあんまり入らないから、浮いてないかが気になりすぎて、落ち着かない。
コースターとグラスが目の前に置かれる。
「お待たせしました」
「どうも」
顔を見ず、とりあえず一口飲む。
おいしいかどうかなんて、わからない。
「で、何の用なの、エマ。カギは返しただろ」
ビックリして思わず吹きそうになった。
え、何でわかった?
まだ二回しか顔を合わせてないのに。
とりあえず目を合わせず、シラをきる。
「だ、誰の事ですか?」
ヤバイ、天パって声が裏返る。
「そんなカツラしたってすぐ分かるんだよ、バカか」
と言いながらカツラを引っ張り外してしまう。
「お、よく出来てるな」
なんて興味津々に見てるから、余計に腹が立つ。
アタシは乱暴にネットを外し、まとめていた髪をほどく。
バレちゃったらもうこんなの意味がない。
サングラスも外し、カウンターに置き、またジンライムを一口飲む。
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