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「で、何しに来たんだ。わざわざオレに会いに来たのか?」
「大筋では、間違ってない」
「やっぱ惚れちゃった? でもダメダメ。オレはアンタの親友と昨日から付き合い始めたから」
昨日とは変わって饒舌なミナトに、アタシは若干ひいていた。
こっちが素なのか?
これは面倒そうだから、早く確めて外に出よう。
「何でカナエと、付き合い始めたの?」
「お前が言ったんだろ?」
「そういう意味じゃない。ただ、もうちょっと真剣に向き合ってほしいと思って言っただけ。カナエが好きだっていうの、分かってるでしょ」
アタシの声が思わず声が大きくなる。
「知ってる」
それをミナトは人差し指を唇にあて、静かにしろ。と言う。
カウンターの端にいたカップルが、ヒソヒソとアタシ達を見ていて、恥ずかしくなる。
でも、こうやって簡単に押さえこまれている事にも、腹が立つ。
アタシは苛立ちを抑えるように、また一口飲む。
「昨日もくだらない事を、遅くまでメールしてきたよ」
喉を通る熱さとは反対に、少し冷静になる。
「くだらないって言うのに、なんで付き合うの?」
「興味がないから」
「は?」
思っていたのとは違う答えで、すっとんきょうな返事をしてしまう。
「そもそもオレは、女なんて嫌いなんだよ。優しくすればすぐつけあがって、色々求めてくるし、強く言ったらすぐ泣く。すぐ愛してるだの、愛してるんだったらアレしろコレしろとか。そういうのウンザリなんだよ。メリットがなきゃ付き合えないね」
「そういう人ばかりじゃないよ。少なくてもカナエは違う」
あんなキラキラした目で、我慢すると言っていた。
カナエの事良く知りもせず、何故そんな事を言うのか分からない。
「同じだよ。
女なんて、みんな一緒」
冷たい声。
一体誰の事を言ってるの?
「だからさ、優等生のミナト君ぐらいだったら誰にやってもいいかな。って。大学で絡んでくる女避けにもなるし」
さっきまでの声とは代わって、開き直る。
その声は嫌いだ。
「じゃあ、あの女とは別れたの?」
「あの女?」
「この前キスしてた」
「ああ、あれ?」
そして、とても残酷な笑顔で言うんだ。
「あの女とはそもそも付き合ってない。
何でも買ってくれるから、とりあえず言うこと聞いてやってるだけ。性欲も処理出来るし一石二鳥だ」
「は?」
「女なんて簡単だよな。甘いセリフの一つでも吐いて、抱いてやれば何でも言うこと聞いてくれる。そういう女は、お前みたいに友情とか持ち出さない分、気楽だ」
「最低だな、アンタ」
アタシは心底軽蔑した。
「そんな最低なヤツに、お前は友達を差し出したんだぜ」
「今すぐ別れろ」
「なんでお前に命令されなきゃいけないんだ? オレはオレで好きにやる」
頭がおかしくなりそうだ。
こいつには情ってもんがないのか?
喉が、カラカラに乾いてくる。
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